【レポート】あっとほっとピクニック#06 『青木野枝の作品を1日で集中して鑑賞する、そして美術館そのものにも耳を傾けてみる』のご報告


12/2、豊田市美術館と名古屋市美術館との両館で開催されている「青木野枝|ふりそそぐものたち」展を、一日で巡り鑑賞するという あっとほっとピクニック #06≪青木野枝の作品を1日で集中して鑑賞する、そして美術館そのものにも耳を傾けてみる≫ が実施されました。 

以下テーブル担当者による当日のレポートです。 
(※文中における作品や展示、対談についての印象や感想は、筆者の主観によるところが大きいのでご容赦ください。) 




開館前となる朝9:15に参加者は名古屋市美術館前に集合し、開館までの時間を用いて、まずは美術館の野外に元来から展示されている青木野枝さんの作品を鑑賞しました。 


そして9:30の開館時刻と同時に名古屋市美術館へと入って「青木野枝|ふりそそぐものたち」展の鑑賞が始まりました。 

今回の参加者のひとりで青木野枝さんの作品を多く鑑賞してきているというAさんから、青木野枝さんの作品や本人についてのことなどを聞くことができました。
また、工学的な関心からこの日のために溶接技術についての事前予習をしてきたというHさんからは、作品における溶接の施しについての技巧的・工学的な解説を聞いたりと、一風変わった切り口からも鑑賞しました。 

名古屋市美術館は今回、展示のための仕切りは一切設けられておらず、建物の本来のままの壁面や空間がむき出しのかたちとなっていました。この日はあいにくの曇り空ではありましたが、名古屋市美術館の建物が自然光を取り込む装置をふんだんに設えていることを、改めて認識させられました。 
空間にそびえる青木野枝さんの作品は、展示されているというよりかは、鎮座しているかのような印象を受けました。個人的には、吹抜けとなっている空間部分の二階から、階下の作品を望むように鑑賞したとき、建物そのものの良い特性が前面に出ている、と強く受け取りました。 

青木野枝さんの作品をじっくりと堪能した後、名古屋市美術館コレクション展示も鑑賞しました。そうするうちに出発時刻となる11時となりました。 


今回もあっとほっとピクニックは、徒歩と電車による移動の旅程でした。美術館から駅まで歩く道中も電車に乗ってからの車中も、各々が展示やアートについてお喋りしたり、これから聴く対談について期待したりとして、しゃべり足らない内に電車は豊田市駅へと到着しました。複数人でおしゃべりできるこういった移動の時間が、観たものを言葉にすることに効果的に働いているように思えました。 

豊田市美術館では14:00から青木野枝さんと美術家の中原浩大さんとの対談が予定されていました。入場整理券を入手できるかという一抹の不安はありましたが、結果的には問題なく参加者全員が整理券を入手することができました。対談がはじまる時間まで、各々青木野枝さんの展示や中原浩大さんの作品も含んだコレクション展示を鑑賞したり、また豊田市美術館に併設されている茶室や、日本庭園を鑑賞したりしました。 

14:00からの対談では、青木野枝さん、中原浩大さん各々が活動の経歴について説明したあと対話をするという形式で進行しました。中原さんによる説明に対して青木さんは終始興味深深で、ところどころで鋭い質問をされていました。そのようには見えなかったのですが実はお二人は22年ぶりに再会されたとのことで、お互いの創作観など、通じるところだけでなく、異なるところが終盤につれて浮かび上がって行き、お二人の対談は親しげな雰囲気の中に緊張感を備えていた、大変興味深いものでした。 


その後、参加者は各々小一時間ほど鑑賞の続きをして、そして17時くらいに豊田市美術館を退館しました。 


その後参加者のみんなで豊田市駅前のレストランに集い、展示や作品について感想などを語り合いました。冒頭でも紹介したAさんは、今回のために事前に青木野枝さんの作品鑑賞のための手引き・レポートを作成して下さっていて、それを読みながら、ああだこうだとざっくばらんに語り合いました。噛みあう意見、噛みあわない意見が飛び交って、対談についても感想や印象など本当に様々な視点がありました。 

私としては、ひとりの作家の作品を集中的に観れたことは、やはり強い鑑賞体験となりました。またひとりの作家の作品が媒体となって、展示空間や建物そのものの質感が対照化され浮かび上がるということを体験として知りました。そして作り手同士の対話から『創作とは何か』という問いを強く突きつけられました。 


今回のあっとほっとピクニックは、参加者によって様々な心象が生まれ得た、密度のある凝縮された内容でしたから、各々が異なる印象を抱いたことだと思います。私としては参加者各々が、様々な視点や観点を知り、新たな価値観を発見できた体験となり得たのでは、と思っています。 

豊田市美術館と名古屋市美術館との両館で開催されている「青木野枝|ふりそそぐものたち」展は、12月24日まで開催しています。ぜひこの機会にご覧になって頂ければと思います。 

(文責:田中) 

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