同時代のSF映画として、導入部でいくつかの映画を紹介させて頂きましたが、結果的に皆さんの比較の対象は「映画」に留まらず多岐に渡りました。そのうちのキーワードの一部を紹介させて頂きますと、「価値観や人種の違い」、「人情」、「SFファンタジー」、「記号」、「音が気持ち悪い」、「テトリス」といった概念的な話題から、『ゼロシティ』『戦争と平和』『スタートレック』『砂の惑星デューン』といった具体的な作品名にまで広がっています。
こういったみなさんの感想を踏まえて少し別の角度から考えてみると、今回鑑賞のテーマとした本作は、社会情勢とも比較して読み解くことができる作品とも考えられます。
例えば、監督のゲオルギー・ダネリヤ氏はロシア国籍のグルジア人で、主人公のウラジーミルはロシア人、ゲテバンはグルジア人です。ロシアとグルジアというと2008年の戦争も記憶に新しいところですが、同じ旧ソ連の国でありながらどこか距離のある2国の関係が、ウラジーミルとゲテバンの力関係にも感じ取ることができるでしょう。
その他の登場人物でも、暴力をふるい人々から金銭を巻き上げる「エツィロップ」は「ポリス」という単語を逆さに読んだとも言われていますし、賄賂次第で通行をさせてしまう門番はどこか腐敗した政治を思わせます。地球では「チャトル人」と「パッツ人」が逆転する(と誤解した)ウェフがつぶやく「ろくでもない」というセリフも、もしかしたら革命のアナロジーなのかも知れません。
「比較」という切り口を用いた今回のツキイチテーブルでしたが、こうしたちょっとした意識の持ち方で、「鑑賞」が感想を述べることに留まらずに、「作品と作品」や「作品と概念」さらには「作品と社会」といった関係性での語りに繋がるのであれば大成功だったかなと考えています。
(文責:And)
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