【レポート】オーディエンス筋トレテーブル#05 『あの日のBゼミとblanClassの今 ~現代美術の私塾から実験の場へ』

2月11、12日の2日間にわたり行われた第5回目のオーディエンス筋トレテーブルは、横浜のオルタナティブスペース・blanClassのディレクターでアーティストの小林晴夫さんを講師にお招きしました。

 1日目は、講師の晴夫さんの父である現代美術家の小林昭夫さんが始められた「Bゼミ」(現代美術ベーシック・ゼミナール)について、そのはじまりから37年間の歴史をたくさんのエピソードを交えてお話ししていただきました。






当時のそうそうたる現代美術家が講師として授業を展開していた「Bゼミ」。
スライドで見せていただいたゼミの風景は、生徒と共に新しい表現を模索するという緊張感が伝わってきました。
 晴夫さんは1968年生まれ。
Bゼミとほぼ同い年で、設立当時はもちろん、16歳でお手伝いを始めるまであまり積極的な関わりを持っていなかったので、それ以前のBゼミのことをリアルタイムで知ることはあまりなかったそうです。
しかし、『Bゼミ~「新しい表現」の実験の場~』を編纂するにあたり、関わりがあった方々にお話を伺ったり、記録写真や授業レポートを重ね合わせ、当時行われたゼミの具体的な内容を把握していかれたそうです。
「自分は生まれたばかりで設立当初のことは、知らないことが多いけれども、Bゼミを語ることはある意味使命だと思っている」
とおっしゃっていたことが印象的でした。

2日目は名古屋にいながらblanClassを体験!
ということで、まずは晴夫さんのレクチャーから始まりました。
お話しはBゼミが始まる前のこと、晴夫さんのお祖父さんが戦前に就職を機に名古屋から横浜に移住した、というところからはじまりました。
(衝撃事実!小林家はもともと名古屋人だった!)
チラシのデザイナーだったお祖父さんがスクラップした戦中の新聞や戦地からの友人の手紙など、
貴重な資料を見せていただきました。
「Bゼミ」はそのお祖父さんが建てた家の2階を改築して作られました。
 そして今はその場所が、blanClassになっています。



レクチャーの後は、横浜のblanClassにいらっしゃる眞島竜男さんの「今日の踊り」の模様をUSTで拝見。
その後、横浜と名古屋をスカイプでつなぎ公開インタビューをしていただきました。
名古屋の参加者から直接眞島さんに質問したり、名古屋の参加者と横浜の参加者でお話しするなど、これまでの筋トレテーブルにはない体験をさせていただきました。



今回のオーディエンス筋トレテーブルでは、現代美術・現代アートは、唐突にジャンルとして現れたのではなく、既存の表現に充足しない作家たちの実験と模索から生まれてきたというような文献でしか知りえなかったことを、小林さんのお話しを通じて実感することができたように思います。
また、小林家の歴史を通じて、現在の私たちが鑑賞している「同時代」や「現代」と言われている作品が、「過去」や「近代」と切り離されているのではなく、つながっているということも強く感じることができました。
その上で、現在の鑑賞者として「現代美術・現代アートとは何か?」をたびたび立ち止まり考えることや、自らを一人の鑑賞者として現代の表現を定点観測して時代を見つめ続けていくことで、より一層、深く広い鑑賞ができるのではないかと感じました。


(t.yasui)

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