【レポート】オーディエンス筋トレ「教えて櫛野さん!“美術が淘汰してきた何か”を見つめ直すこと」

オーディエンス(=鑑賞者)としての筋力アップをめざす「オーディエンス筋トレ」2015年度3回目のレポートです(概要はこちら⇒参照)。



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講師には、アール・ブリュットを専門に扱う美術館「鞆の津ミュージアム」のキュレーター:櫛野展正さんをお招きし、同館の取り組みをご紹介いただきました。

同館が専門として掲げるアール・ブリュットとは、「生の芸術」をあらわすフランス語で、正規の芸術教育を受けていない人による表現に「無垢」や「自由」を見いだしたフランス人画家・ジャン・デュビュッフェが創り出した概念です(1945年)。

櫛野さんはこれを「アート=生き延びるための技術」と読み替え、死刑囚やヤンキー、高齢者やスピリチュアルなど意欲的な企画展を展開してきました。


そのキーワードは二つあり、一つは「ヤバイ」=その表現が唯一性を備えていること、もう一つは「狂ってる」=過剰な反復性・継続性をもってしか為しえない表現(=“超絶徒労系”)であること、だそうです。

ご紹介いただいた企画展のすべてが、私たちが固定的に捉えがちなアートの領域からはかけ離れており、人が営む表現の豊かさと彩り、その多様性を知ることができました。

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イベントの題名にある「美術が淘汰してきた何か」とは、同館の企画展「ヤンキー人類学」の巻頭言から引用したものです。

櫛野さんも、社会の周縁にある表現が見捨てられ、不可視のまま消え去っているおそれについて触れ、「ぼくがそれを見付け、伝えていくことで、なんとかしたい」と仰せでした。

私たち市民社会が価値を設定し、記録し、流通させ、収蔵している表現がいかに限定的であるのか、その背後で何かを見捨てているのではないか、深く考えさせられました。

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くしくも同館は、現在ひらかれている展覧会「障害(仮)」(⇒参照)をもって一時的な閉館が決定しています。会期は本年12月13日(日)まで、東海地区からとなると小旅行となりますが、ぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?

また、櫛野さんがあらたに手がけるプロジェクト「クシノテラス」のウェブサイトも立ち上がるようです(⇒参照)。こちらもぜひご覧ください!

(文責:山岡)





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